マフィーからの手紙(2)
お久しぶりです。小さな夢の国「芸術の森」に住む妖精のマフィーです。
みなさん、笑顔でさわやかな毎日を過ごしていらっしゃいますか。
いま、「芸術の森」の中には、たくさんの花が色鮮やかに咲いています。
木々たちは緑の葉っぱを思いきり伸ばして気持ちよさそうに初夏を楽しんでいます。
さて、今回は「芸術の森」の真ん中にある「森のメッセージ美術館」についてお話しましょう。
この美術館は、森に住むものなら誰でも参加できるという自由な美術館なのです
。
しかし、作品を発表する上で大切な約束事が一つだけあります。
それは「暴力を肯定しない」という約束事です。
みんながこの約束事を守っているおかげで、森の中は平和が保たれています。
しかし、森の中にも人間の世界と同じように、ときどき自分勝手な横着者がいます。
先日こんなことがありました。
イノシシのボアが、子供の日のプレゼントに、
自分の子供たちが広いところで遊べるよう、大きなクヌギの木を切りました。
ボアの子供たちは「ワーイッ!」と喜んで走り回っています。
しばらくすると、「イタイヨー」「助けてくれー」という声が聞こえてきました。
ボアの子供たちは、びっくりして走り回ることをやめ、その声の方に耳を傾けました。
その悲しい声はボアが切ったクヌギの切り株から聞こえてきたのです。
しかし、親のボアにはその声が聞こえません。
「どうしたの?どこが痛いの?」と、子供たちがクヌギの切り株に顔を近づけています。
「キミたちのお父さんが、キミたちが遊べるようにと、ワタシを切ってしまったんだよ」。
ボアの子供たちはびっくりして、ボアに助けを求めに行きました。
ボアは「お前たちを喜ばせようとして切ったんだ。何が悪い!!」と聞く耳を持ちません。
子供たちは、今まで大好きだったお父さんが少し嫌いになりました。
切り株のことが心配でなりません。
子供たちは、森の仲間たちに声をかけ合い「切り株を一緒に助けよう」と呼びかけました。
そして、一生懸命水を運んだり、落ち葉を集めて手当てをしたり、みな必死で切り株を助けました。
おかげで切り株は元気を取り戻したのです。
「切り株さん、ごめんなさい。ボクたち知らなかったんだ」と子供たちが云いました。
「いやいや、こちらこそありがとう。キミたちのおかげでワタシは元気になったし、
また新しい幹を伸ばしていくよ」と切り株がお礼を云いました。
森の長老をしているフクロウのアールがその一部始終を見ていました。
そして、この出来事を森のすべての仲間たちに伝えようと、
切り株や子供たちと一緒に話し合いをしました。
相談の結果、切られたクヌギを使って作品をつくりました。
その作品は「森のメッセージ美術館」に飾ってあります。
タイトルは「○○○○」です。
さて、どんなタイトルが付いているのでしょう。
みなさん自身で考えてみてください。
もちろんボアも、子供たちに誘われてその作品を見に行きました。
一週間後、ボアが切り株に座って考え込んでいる姿をマフィーは見つけました。
(次回につづく)